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地方自治 第92条~第95条
第93条 地方公共団体の機関、その直接選挙

【弁護士】 先ほども言ったように、日本国憲法の第93条のの規定は住民自治を規定したものと言われています。

【生徒】 住民自治とは、住民の意思に基づいて行われるというものでしたよね。

【弁護士】 そうですね。そのため、住民自治とは地方自治の本旨のうちの民主主義的要素とされています。民主主義っぽい規定だと思いませんか?

【生徒】 民主主義って、国民が国の権力の主体ってことでしたっけ?政治の主役は国民だというか…。確かに2項の「その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する」って規定は民主主義って感じがしますね。

【弁護士】 民主主義はざっくり言うとそんな感じですね。日本国憲法における地方自治では、地方公共団体の住民がその地方公共団体の権力の主体であるということになりますね。だからこそ、地方公共団体の議会が設置され(1項)、地方公共団体のリーダーや議会の議員は直接選挙で選ばれるのです。

【生徒】 あれ、でも国政の場合と違いませんか?日本国憲法では,国のリーダーを私たち国民は直接選べませんよ。

私たち国民は,内閣総理大臣を投票で選んだことがありません。

【弁護士】 いいところに気が付きましたね。以前話したように、内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されることが憲法67条1項前段に定められています。また国会議員は憲法43条1項によって、国会議員は国民による選挙で選ばれることになっています。つまり、国政については憲法上間接民主制がとられているのです。
これに対して、地方自治については直接民主制がとられることになったのです。首長も議会も直接選挙で選ばれるので、いわば大統領制の制度をとっているといえるでしょう。

【生徒】 日本は国政では議院内閣制をとっているって、前に言ってましたよね。何で、地方公共団体ではこのような直接選挙にさせたのですか?

【弁護士】 地方自治の民主化を徹底させるためです。
ところで、日本国憲法でいう地方公共団体とは何を指すかわかりますか?

【生徒】 都道府県とか、市区町村のことですよね?

【弁護士】 そうだね。けれど、今から50年ほど前に、最高裁で東京23区は地方公共団体ではないという判断がされたことがあるんだ。

【生徒】 なんでですか?

【弁護士】 地方公共団体といえるには、その地域の住民が経済的、文化的に密接な共同生活を送って、共同体意識というものを持っているという社会的基盤が必要だとしたんだ。また、立法、行政、財政的な面で、地方自治の基本的機能が付与されていないとも判断した。

【生徒】 じゃあ渋谷区とか、墨田区には密接な共同生活がなかったんですか?

【弁護士】 当時は、市や町に比べると自治権にかなり制約がされていたんだ。これは、当時は郊外から23区に働きに出るという人が多く、区に自治権を与えると、区の格差がひどくなるから、東京都全体で行政をしましょうという理由に基づくものと最高裁では判断されている。

【生徒】 今でも23区って地方公共団体ではないのですか?

【弁護士】 これ以降最高裁判例が出ていないから、はっきりとしたことはわからないけれど、今では23区に地方自治の基本的機能が付与されていると言えるからね。
ちなみに地方自治法では、23区などの特別区は「特別地方公共団体」とされているんだよ。

【生徒】 特別地方公共団体ですか…。なんだか難しい言葉ですね。

【弁護士】 地方公共団体についての話はこれくらいにして、次は、日本国憲法92条にある「住民」とはどういう意味か考えてみよう。

【生徒】 「住民」ってその地方公共団体に住んでいる人ですよね。この位、わかりますよ。

【弁護士】 いやいや、住民の定義は意外と難しいものなんだよ。国民の定義は憲法10条に「法律でこれを定める」とあって、具体的には国籍法に定めがあります。これに対して、住民を定義した規定は憲法にはありません。例えば、日本で生まれ育った在日外国人は住民といえるかな?

【生徒】 その地方公共団体に住んでいる人が住人であるとすると、そのような在日外国人も住民なのではないでしょうか?

【弁護士】 そのように言えそうだよね。ところが、最高裁は住民を「地方公共団体の区域内に住民を有する日本国民」だと判断したんだ。もっとも、条例で永住外国人などについて地方公共団体の選挙権を与えること自体は憲法上も禁止されていないとは言っているんだけどね。

【生徒】 憲法上、住民とはいえないけど、住民として扱うような規定を条例で決めても違憲ではない…。なんだか複雑な論理ですね。

【弁護士】 そうだね。最高裁の論理は一見すると不思議なものに見えるかもしれないね。
簡単に言えば、在日外国人に住民という資格をあたえることは憲法上の義務ではないが、憲法上は禁止されていないから、その地方公共団体の判断で決めていいよということだね。

条例の話が出てきたから、94条の話に移ろう。

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