

【弁護士】 次に憲法50条は「両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。」と規定しています。いわゆる不逮捕特権というものです。
【生徒】 国会議員だけに不逮捕特権を認めるなんて平等に反しないんですか?
【弁護士】 いいところに気づきましたね。不逮捕特権は法の下の平等(14条1項)の例外と考えられています。
【生徒】 そうなんですか。
では、なぜ国会議員にだけ不逮捕特権が認められているのですか?
【弁護士】 一般に①議員の身体の自由を保障し、政府によって議員の職務執行が妨げられないようにすること、②議員での審議を可能にすることの2つが理由だとされています。
【生徒】 議員がいなくなると議院での審議ができないので②の理由は分かります。でも、①の政府が議院の職務執行を妨げることはあるんですか?
【弁護士】 現代の日本では考えられないですが、中世のヨーロッパでは、王が対立する議員を政治犯として不当に逮捕したことが不逮捕特権の由来となっています。そのため、①が理由になることも理解してもらえるのではないでしょうか。また、これは不逮捕特権が国会議員にのみ認められていることの理由にもなりますね。
【生徒】 よくわかりました。不逮捕特権には「法律の定める場合を除いては」という例外がつけられています。これは具体的にどのような場合を指すのですか?
【弁護士】 一つは院外における現行犯の場合です。例えば、路上で人を殴ってその場で逮捕された場合ですね。このような場合には、不当な逮捕とはいえないことから、不逮捕特権の例外とされています。
【生徒】 なるほど、他にも例外はあるんですか?
【弁護士】 もう一つはその院の許諾がある場合です。院の許諾がある場合には、逮捕の理由があることを院が認めたということで、不当な逮捕とはいえないからです。このような理由から、院の許諾には条件や期限を付けることができないと考えられています。
【生徒】 不逮捕特権ということは、逮捕されずに起訴されることもあるんですか?
【弁護士】 あります。不逮捕特権は逮捕されない権利であって、訴追されない権利ではないからです。このように判断した判例もあります。