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国民の権利及び義務 第10条~第40条
第12条 自由・権利の保持義務、濫用の禁止、利用の責任

【弁護士】 憲法12条前段は、「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。」と定めています。
まず、ここではどのような権利が想定されているのでしょうか。

【生徒】 文字通り解するなら、憲法に規定されている権利全てですよね。

【弁護士】 憲法に規定されている権利には、「国家賠償請求権」(17条)や「刑事補償請求権」(40条)のような、人間であることによって当然認められる権利とはいえないような権利も含まれていますが、そのような権利についても国民は保持する努力をしなければならないのでしょうか。

【生徒】 そういった権利は、人類の長年にわたる自由獲得の努力の結果として認められたものではなく、憲法によって与えられたものなので、あえて保持する努力をすることもないようにも思います。

【弁護士】 そのように考えることもできますよね。ただ、17条や40条のような権利も、重要な権利ですので、国民自ら保持すべきであるとも考えることができると思います。このように、いずれにも解することができると思います。
次に、「不断の努力」とは、具体的にどのようなことをするのでしょうか?

【生徒】 全くイメージがわきません。

【弁護士】 国民は、公権力から憲法上の権利が侵害されるような事実が発生することを防止し、発生した場合にはその結果を是正する義務を負うということだと思います。なかなか具体的に想像するのは難しいですね。義務とはいっても、強制力はなく、心構えのようなものなので、実際に侵害防止措置や是正措置をとるようなことはほとんどないように思います。
では、12条後段にまいりましょう。
憲法12条後段は、「又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」と定めています。

【生徒】 12条後段は、①人権を濫用してはならないこと、②国民は、公共の福祉のために人権を利用する責任を負うことのふたつを定めています。

【弁護士】 そうですね。まず、①人権を濫用してはならないことについて考えてみましょう。
権利の濫用の意味は分かりますか?

【生徒】 うーーん。権利を好き勝手行使することですか?

【弁護士】 あながち間違ってもいませんが、正確には、形式上は権利の行使として認められるが、実質的に権利の行使として認めると本来の権利の目的に沿わず不合理であるため、違法とされる場合をいいます。
次に、②国民は、公共の福祉のために人権を利用する責任をおうことについて考えてみましょう。
ここでは、「公共の福祉」という言葉がでてきました。憲法では12条後段以外にも13条、22条、29条に「公共の福祉」という言葉がでてきます。12条・13条の「公共の福祉」と22条・29条の「公共の福祉」の意味は一般的に違うと考えられているので、注意しましょう。ここでは前者の意味について考えます。

【生徒】 はい。そもそも「公共の福祉」という言葉自体がピンとこないのですが、「全国民の利益」と同じような意味と考えておいていいですか?

【弁護士】 間違いではないので、それで構わないと思います。ただ、何が「全国民の利益」なのかが問題ですよね。

【生徒】 確かに、何がと聞かれると、全く分かりません。

【弁護士】 全国民の利益というのは社会の利益と言い換えれそうですが、社会の利益のために人権を利用する責任を負ったりだとか、社会の利益のために人権を制限することを許すとどうなるでしょうか。

【生徒】 うーーーん、人権の制限がどんどん許されることになり、人権の保障があまくなってしまいそうな気がします。

【弁護士】 そうですね。社会の利益と一個人の利益をただ比べると、社会の利益の方が大きいとなることの方が多いと思います。そのような場合に常に一個人の権利の制限を許していては、人権保障ということから遠のいてしまいます。ここでは「全国民の利益」というものを、文字通りとらえてはならないのです。
ここでまず確認しなければならないのが、ある人の人権が制限されるのは、他の人の人権によるということです。例えば、AさんがBさんの私生活についての暴露本を出版しようとしているとします。これはまさしくAさんの表現の自由の行使ですね。もしこの暴露本が出版されれば、Bさんのプライバシー権が侵害されるでしょう。逆に、この暴露本の出版が禁じられれば、Aさんの表現の自由が侵害されるでしょう。このように、個人の権利と個人の権利はぶつかり合います。

【生徒】 なるほど。そうすると、「公共の福祉」というのは、そのぶつかり合いを調整する概念なのですね?

【弁護士】 そうです、よく分かりましたね。

【生徒】 ただ、どのようにその調整をするのかは分かりません。

【弁護士】 確かに、その点は難しいですね。
ぶつかり合いが生じているので、結局はいずれかの個人に我慢をしてもらうことになりますよね。そのような我慢をさせることが必要であり相当であるのかという調整が、「公共の福祉」による調整だと思っておいて下さい。もう少し噛み砕くと、ぶつかり合う人権同士を比べて、ある一方の個人に我慢をしてもらう方が他方の個人に我慢をしてもらうよりも合理的だよねと多くの人が納得するような場合に、他方の個人に我慢をしてもらうのです。このように、およその人が納得するかたちで人権同士のぶつかり合いを調整することが、「全国民の利益」ととらえざるをえないと思います。

【生徒】 なんとなく理解できたような気がします。つまり12条後段は、他者の人権を不当に制限することのないように人権を行使しなければならないということを定めているのですね。

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