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国民の権利及び義務 第10条~第40条
第28条 勤労者の団結権・団体交渉権その他団体行動権

【弁護士】 28条には,「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は,これを保障する。」と規定されています。

【生徒】 「勤労者」って会社とかで働いている人っていうイメージなのですが…。

【弁護士】 基本的にはそのイメージで正解だね。堅い表現をするならば,自分の労働力を提供して,その対価としての賃金によって生活している人,つまり労働者のことだ。

【生徒】 わかりました。でも,「団結する権利」とか「団体交渉…する権利」とか,「その他の団体行動をする権利」とかは全然イメージが湧きません。労働者が団体で何かやることにはどのようなメリットがあるのですか?

【弁護士】 「団結する権利」っていうのは,労働者の団体を結成する権利です。「団体交渉…する権利」とは,労働者の団体が使用者と労働条件について交渉する権利です。そして,「その他の団体行動をする権利」と労働者の団体が労働条件の実現を図るために団体行動を行う権利のことで,中心となるのはストライキです。
27条のところでも話しましたが,現実問題として,労働者は使用者よりも不利な立場に立たされていることから,労働者を団結させることによって使用者の地位と対等に立たせることが28条の目的といえるだろう。

【生徒】 ストライキって何ですか?あと,労働者が団結するとなぜ使用者の地位と対等になることが可能なのですか?

【弁護士】 それでは,君の両方の質問に答えるために,ストライキを例に考えてみよう。ストライキっていうのは,労働者が労働条件等の改善を要求して集団で労務の提供を拒否する行動のことなんだ。
使用者としては,ストライキに参加する人が少なくて通常業務を行うことにそれほど支障がないかなら,労働者からの要求に応じる必要性はあまりないでしょ。でも,労働者の大半がストライキに参加した場合には,業務そのものを行えなくなてしまうから,使用者としても,業務を通常通り行って収益を上げていくためには労働者からの要求に耳を傾けざるを得なくなるっていうわけ。
もっと,身近な例を考えてみれば,生徒である君1人が学校に要望を出しても認められない可能性が高いけど,クラス全員,さらには全校生徒で一つの要望を出した方が学校側としても無視しづらいっていうことと似てるかな。
団結することで,地位を高めることができるとはそういう意味なんだ。

【生徒】 そういう意味なんですね。なんか身近な例を考えてみたらイメージをつかむことができました。ところで,ストライキが憲法上の権利とされることによって労働者にとって具体的にどのようなメリットがあるのですか?

【弁護士】 よい質問ですね。労働者が正当にストライキを行った場合には,刑事免責と民事免責という効果が得られます。わかりやすく言えば,ストライキが刑事罰に触れるとしても刑罰が科されることはないし,ストライキを理由として使用者が労働者に対して損害賠償を求めたり,解雇しようとすることは許されないということです。

【生徒】 労働者の権利が憲法上保障されているっていうのはそういうことなんですね。条文の意味についてはよくわかりました。

 

(28条の論点解説)

【生徒】 でも先生。労働者がストライキを行うことが憲法で保障されているとしても,例えば急にバス運転手がストライキを起こしたりしたらバス利用者の生活は大混乱になっちゃいますよ。

【弁護士】 確かに君の言うとおりだね。28条で認められている権利(労働基本権)の行使は社会的影響力が大きいから,全く無制限というわけにはいかないんだ。特に判例上問題となったのは,公務員の労働基本権の制限についてなんだ。

【生徒】 確かに市民のために活動してくれている公務員が労働基本権を行使したら私たちの生活は大パニックになること間違いなしですね。でも,実際に公務員のストライキとかって話を聞いたことがないような気が…。

【弁護士】 現行法では,公務員の労働基本権のうち,争議権(ストライキ)は全面一律禁止されており,大幅に制約されているからね。

【生徒】 そうなんですか!?労働基本権は,労働者の生きる権利として保障されているから,重要な権利ですよね?一律に争議権が禁止されているなら,28条で保障されている意味がないんじゃないですか!

【弁護士】 そう,だから判例でも争われたんだね。ここでは,現在の最高裁判例の考えを知るために全農林警職法事件を取り上げたいと思います。

・全農林警職法事件

【生徒】 事件名だけ聞いてもさっぱりわかりません。どういった事件だったのですか。

【弁護士】 ある法案に反対する全農林の労働組合の幹部が,農林省職員に対し,争議行為を起こそうという内容の電報を送ったことによって,その労働組合の幹部は国家公務員法違反(争議行為あおりの罪)で起訴されたんだ。これに対して,公務員の争議行為の禁止は憲法違反ではないないかと主張された事件でした。

【生徒】 実際に争議行為を起こしたわけでもなく争議行為をあおっただけで刑事罰とは厳しいですね。最高裁はどのように判断したのですか?

【弁護士】 簡単にいうと,公務員は憲法上「全体の奉仕者」とされていて特別な地位にあるし,公務員の仕事は公共性が一般的に高いものだから,国民全体の利益を守るためには,公務員の争議権は一律に全面的に否定されてもしょうがないって判断したんだ。判例は,その理由として,公務員が,他の労働者が争議行為を行う場合といかに異なるかを挙げているんだけど,細かな話になるからここでは立ち入らないね。

【生徒】 公務員も労働者であることは変わりないのに,労働者としての重要な権利を一律に奪われてしまうのはちょっとひどすぎるように感じます。

【弁護士】 確かにね。一口に公務員といっても,その仕事内容は多様だから,他の私企業で働いている労働者と同じような仕事をしている者もたくさんいるはずだよ。それなのに,公務員というだけで労働者としての重要な権利を一律に奪われても仕方ないのかどうかは今後も考えていかなければいけないね。

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